競輪の予想において並びは超重要!ラインから読み解くレースの展開とは?

競輪予想理論

競馬の隊形とも、ボートレース(競艇)の周回展示とも違う、競輪に独特なものがラインです。ラインがそもそも何か知らない方に端的な説明をするならば、縦の一列になってのチーム戦と表現できるでしょう。一列であるがゆえに、「ライン」です。

競輪選手には、それぞれ得意とする戦法があります。個々が最大限に力を発揮するために、道中の厳しい戦いを結束してくぐり抜けたうえで、最後の直線で勝負をつけることが、競輪の本質として存在します。

この記事では、競輪における並びとラインの考え方、ひいてはそこから紐解けるレースの展開や、それぞれの役割について解説していきます。

競輪は並びからレースが見える

©立川競輪

公営競技において、展開予想はレースのゆくえを考えるうえで非常に重要なプロセスです。競輪がとりわけ他の競技以上に複雑で、それゆえに妙味があるといわれるのは、その展開にチーム戦としてのラインがあるからに他なりません。

それでは、ラインの本数が織りなす典型的なレースの展開について、ひとつずつ見ていきましょう。

2分戦の説明、およびラインの決まり方

©Kドリームス

大きなラインが2つ存在する並びの場合、この隊形は2分戦と呼ばれます。よく見られるのが7車立ての場合で、3車のラインが2本と、単騎の選手が1人という形です。この時、単騎で走る選手はラインを形成しているとはみなされないため、ラインが2つの2分戦になります。

ラインを形成する理由は、先頭の選手は後ろの選手に他のラインが迫るのを防いでもらいたいからであり、後ろの選手は先頭の選手に風よけになってもらいたいからです。

モータースポーツの世界でよく使われる言葉として、スリップストリームという現象がありますが、これは70km/hもの高速でバンクを疾走する競輪においても発生します。

先頭の選手が空気抵抗を受け持つことで、後ろの選手は空気抵抗を受けなくなり、さらには前の選手に吸い寄せられるような現象が見られます。これがスリップストリームです。

結果として、「番手」と呼ばれる2番目の選手はなんとしても強い自力型、逃げ型の選手の後ろにつきたいと願い、より自分の力を引き出してもらいたいと考えます。これはまた同時に、番手こそが競輪で最も有利といわれるゆえんです。

ラインは所属支部、ならびに所属地区によって決定しますが、ラインの順番は主に選手の格によって決定されます。ただし、選手が納得しなかった場合、また、不利な3番手以降を避けたい場合は単騎になるといえるでしょう。

さらに、どうしても強い自力選手の後ろがほしい場合は「競り」として、最初から自力選手の後ろの番手選手をどかしにかかることを宣言します。

また、競りは宣言していなくても発生する可能性があるため、2分戦でも思わぬ展開の乱れが生まれ、選手にとってもファンにとっても予期しない結末をもたらします。

3分戦の説明、およびラインの総合力

©Kドリームス

3分戦は、9車立てでよく見られる選手たちの並びであり、代表的なのは3車で構成されるラインが3本に分かれるもの(3・3・3)になります。これは3×3で9人なので、とてもきれいな3分戦となりますね。

他にも4・3・2という形もあり、この場合はやはり多くの選手を率いている4車ラインが有利になる傾向にあります。

ただ、単純にラインが長ければ有利な部分以上に、選手の能力が重要なのは言うまでもありません。

では、先頭を引っ張る選手が強ければ強いほど、そのラインが強くなるのかといえば、これがまったくの誤解です。先頭が強すぎれば、後ろの選手はついていけないパターンが出てきます。これを「ラインがちぎれる」と表現します。

ラインの2番手以降も強くないと、ラインはそのチームとしての真価を発揮できません。とりわけラインの番手が強いと、迫ってくる他のラインに対して「ヨコの動き」を見せ、その進撃を食い止める働きをします。

ヨコの動きは匠の技が発揮される場面であり、やりすぎると相手選手を落車させ、押圧による失格裁定を下されてしまいます。体当たりや頭突きで相手を止めつつ、自分のラインは崩壊させない、そうした細かな動きが要求されるといえるでしょう。

一方で、妨害を受ける選手はそうした戦いを挑まれてもひるまず、減速もせず、がっしりと乗り越えていく力が試されます。競輪選手にとって最も大切な能力は体幹の力と言われることがありますが、こうしたレースでの現実に由来しています。

細切れ戦の説明、およびラインの結束力

©Kドリームス

ラインが細かく分かれる場合、細切れ戦と呼ばれます。7車立てにおける2・2・2・1、9車立てにおける2・2・2・2・1や3・2・2・1・1などは、細切れ戦でもよく見られる編成でしょう。

他方、9車立てでの3・2・2・2は広義の細切れ戦ながら、概ね4分戦と呼ばれることも多い組み合わせです。

いずれにしても、細切れ戦は展開の紛れが多くなります。ラインによる上位独占が起きにくいどころか、そもそも2車以下のラインだけだと、上位独占そのものが不可能になります。

先陣を切って逃げるラインからしてみれば、たとえどんな動きになったとしても、自分の2車後ろはすぐに別のラインです。そこでじっくり構えて、万全の態勢からのまくりを放たれると、優秀な番手選手がついていても防ぎにくくなります。

では、後ろのラインが常に余裕なのかというと、こちらも高い緊張感を強いられます。何しろ先頭でラインを導く自力型の選手が多いため、仕掛けどころの相互の牽制が激しくなります。自分のラインの動きを利用して、他のラインに出し抜かれる展開も考えられるでしょう。

そうして、お互いがお互いの動きを見ているうちに、勇気を出して逃げた人気薄のラインがワンツーという結果を招くことだってあります。ラインは多ければ多いほど、それぞれの意志が複雑に絡み合い、予想だにしない結末へと突き進んでいくといえるでしょう。

そんな中で重要なのが、ラインの結束力です。一般的に、ラインの絆の大小は同ホームバンク、同県、同地区、同地方、隣接地区、混成の順番で決まると言われています。

結束力が強いラインはお互いの利益のために最後まで死力を尽くし、結束力が弱いラインは他線への乗り換えや直線前での早めの仕掛けなどが見られる傾向にあり、そうした要素も予想に加えると好配当につながるでしょう。

ラインの結束力を担保する同地区の概念について

先ほどの項目で、競輪の「地区」について述べました。競輪における地区は地理上の地区とはまた別の区分になっているので、注意が必要です。競輪の地区は8つに分かれており、以下のように列挙できます。

北日本:北海道、青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島
関 東:茨城、栃木、群馬、埼玉、東京、新潟、長野、山梨
南関東:千葉、神奈川、静岡
中 部:愛知、岐阜、三重、富山、石川
近 畿:福井、滋賀、京都、奈良、和歌山、大阪、兵庫
中 国:岡山、広島、山口、島根、鳥取
四 国:香川、徳島、高知、愛媛
九 州:福岡、佐賀、長崎、大分、熊本、鹿児島、宮崎、沖縄

特徴的なのは南関東ではないでしょうか。この付近は競輪場の数が非常に多いため、選手の数も充分にそろっており、上記のような区分になっています。

もしも1つの競走に同地区の選手が集まりすぎた場合、3番手や4番手といった勝負しづらい後ろ側を避けるため、ラインが分かれることもあります。また、時には同じ地区でも競りが発生します。競輪はまさしく人間ドラマのひとつの形といえるでしょう。

ラインは競輪の娯楽性の源

©サンケイスポーツ

ラインがあるから、競輪は「人間が戦う醍醐味」をどこまでも引き出してくれます。そこには多くの人の思いがあり、誰かのために走るという利他の精神さえも垣間見えます。

時として、同県の先輩のためにつぶれる覚悟で突っ走る逃げ選手の姿は、競輪というものの根底にある人間の温かい部分に触れさせてくれるでしょう。

もちろん、それを知らずに買ってしまって、あんなのは八百長じゃないかと言いたくなることがあるのもわかります。しかし、「人が走るから競輪」なのだと、じっくり考え直してみてください。ラインの存在は、そうした人間の様々な思惑がまぜこぜになって、ファンに千変万化の姿を見せてくれます。

時には、そのラインの思惑どおりに事が運ぶでしょう。

時には、ラインがまとめてその機能を発揮せずに終わってしまうでしょう。

それらはまるで人生の縮図のようであり、だからこそ、人が競輪に惹きつけられる根幹になっているともいえます。

そうした人の感情さえも読み解くからこそ、競輪予想は実に楽しいものとなります。

「このラインが逃げるか、このラインがまくれるか、このラインはちゃんと後ろの選手を活かすだろうか」

あらゆる角度から検討し、様々な要素から検証を重ねることによって、競輪の奥深さと、その予想が当たった時の喜びは天井知らずで増していきます。

最初はまるでわからなくても構いません。並びの予想を見て、「この選手は前の選手についていけるかな」という単純な予想から始めてみましょう。すると、これまで五里霧中だった競輪予想にも、一筋の光が射し込む心地になるはずです。